ある山の中のあぜ道を、二人の人間が歩いていました。 一人はとても小さく、黄色の長靴が一歩進むたびにボフッボフッと音を立てるほどヨチヨチで、もう一人はとてもノッポで、既製のロングコートが膝のところまでしか届いておらず、ズボンもツンツルテンでした。 木々は真っ白い綿帽子をかぶり、あぜ道はまるで雲の上のようにフカフカに見えました。 「ゆーきやこんこー、あーられやこんこ」 ヨチヨチの小さな方が楽しそうに歌って、ふと何かに鼻先をつままれたように口をつぐみました。それからノッポの方を見上げてこう言ったのです。 「ねえ父様、あられやこんこのあられって、あのことでしょうか、あのおせんべいの親戚みたいな」 その言葉を聞いたノッポは少し笑って、小さな方の頭を撫でました。 「そうだね、そうだといいね。あられが降ってくるといいね」 「はい、ぼく大好きです、あられ」 そう言うと、小さな方もノッポの方も二人で声を合わせて歌い始めました。 とても楽しそうな歌声がシンと静まり返ったあぜ道に響きます。 その歌声を、大きな木の後ろで二匹のキツネが聴いていました。 「おい、聞いたか」 「聞いたぞ」 「あられが降ってくるらしいな」 「降ってくるらしいぞ」 二匹のキツネはビッグニュースを掴んだ新聞記者のように、急いで森の奥へと走っていきました。真っ白い真綿のような雪が、二匹が走るたびに舞い上がります。 森の奥では、キツネの仲間たちが寒そうに背中を丸めて井戸端会議をしていました。 そこへやって来たキツネの二匹は、人間たちから聞いたことを得意げに仲間たちに話します。 キツネたちは大喜びして、その歌を歌い始めました。 「ゆーきやコンコン、あーられやコンコン」 しかし、どんなに歌ってもあられは降ってきません。 声が嗄れるまで歌いましたが、あられは降ってきません。 「なんだよ、嘘つき」 「ひどいや、仲間をだまして」 キツネたちはガッカリして、口々に二匹に悪口をぶつけて去っていきます。ガッカリしたのは、二匹も同じでした。 「あられ、降ってこないな」 「降ってこないぞ」 「おかしいな」 「おかしいぞ」 二匹は顔を見合わせて、どうしてあられが降ってこないのか、今度は二匹そろって空を見上げました。大きな雪がひとひら、キツネの鼻先に落ちてきました。 雪は降ってきましたが、二匹の期待しているあられは……。 しかし、あられが大好きな二匹はどうしても諦め切れません。 「歌い続けたら降ってくるかもしれないな」 「降ってくるかもしれないぞ」 「もう少し頑張るか」 「もう少し頑張るぞ」 そうして二匹は再び歌を歌い始めました。 「ゆーきやコンコン、あーられやコンコン」 その歌声は何日も何日も続き、とうとう、あの歌は「雪やコンコン、あられやコンコン」と歌うものだと人間たちに勘違いされるようにまでになったとか、ならなかったとか。
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| 旧サイトの跡地に 引越しのご挨拶と共に置いていた 小さな物語です。 (2006.12.22) |
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